ポーランドで進むデジタル化は、業務の効率を高める一方、新たな脆弱性も生んでいます。病院や自治体を狙うランサムウェアから金融機関になりすますフィッシングまで、サイバー攻撃への備えは重要性を増しています。中東欧の地政学的緊張も、国家と関係する攻撃者や犯罪組織による活動への警戒を高めています。

外国投資家、技術サービス企業、ポーランド企業にとって、2026年は重要な年です。規制への対応と経営層が担うサイバーレジリエンスを、事業戦略の一部として進める必要があります。

本記事では、2026年のポーランドのサイバー脅威、新たな傾向、防御と法令対応を強化するための実践的な対策を解説します。


市場環境

複雑化する脅威

電子行政、フィンテック、インダストリー4.0などの分野でデジタル経済が発展する一方、攻撃の対象も広がっています。CERT Polskaの年次報告でも、詐欺、マルウェア、ランサムウェアなどへの対応が取り上げられています。企業が考慮すべき主な脅威は次の通りです。

  • ランサムウェアとデータを使った恐喝:病院、自治体、中小企業も標的になります。システムを暗号化するだけでなく、盗んだ情報の公開も脅しに使う二重恐喝への対策が必要です。
  • フィッシングと認証情報の窃取:銀行、通販、配送事業者などの有名ブランドになりすますポーランド語のメッセージが使われます。PKO Bank Polski、Allegro、InPostなどを装う手口や、偽の決済画面へ誘導するSMS型のスミッシングに注意が必要です。
  • DDoS攻撃:大量の通信でサービスを利用困難にする攻撃です。政府機関やメディアなどが標的となり、政治・国際情勢と関連した活動もあります。
  • 供給網やソフトウェアの侵害:ソフトウェア更新や取引先の接続を悪用して、複数の組織へ侵入するリスクがあります。SaaSやクラウドへの依存が増えるほど、外部との信頼関係の管理が重要になります。
  • 国家に関連する諜報活動:高度で持続的な攻撃を行うAPTグループが、行政、政策研究、エネルギーなどの分野を狙うリスクがあります。個別の攻撃主体の特定は、当局の公表と技術的な根拠に基づいて判断する必要があります。

規制と制度の動向

ポーランドはEUの枠組みを踏まえ、国のサイバーセキュリティ制度を強化しています。

  • NIS2指令:EU加盟国の国内法化期限は2024年10月17日でした。エネルギー、医療、運輸、ICT、一部製造業などの対象組織に、リスク管理、インシデント報告、供給網の安全対策を求める枠組みです。EU全域で同じ日に企業の具体的義務が一律に開始したという意味ではなく、各国の実施法を確認する必要があります。
  • 国家サイバーセキュリティシステム法(KSC)の改正:2026年4月3日に施行され、NIS2に対応する重要主体・必須主体の対象が拡大しました。適用は業種、規模、活動内容と例外によります。政府の期限案内では、施行時に対象要件を満たし、職権登録されない組織の自己登録期限は2026年10月3日、移行対象となる新義務の実施期限は2027年4月3日とされています。2026年10月時点では前者はすでに経過しています。後から対象となる組織や既存の義務がある組織は、自社に適用される日程を個別に確認してください。
  • 専門機関と国際協力:ポーランドのサイバー防衛部隊司令部(Dowództwo Komponentu Wojsk Obrony Cyberprzestrzeni)やCERT Polskaなどの機関は、それぞれの任務に応じて国内外の組織と連携しています。ENISA、Europol、NATOなどとの協力も、安全保障と民間の対応能力を支える要素です。

一方、サイバーセキュリティの人材不足は課題です。特に中小企業では、予算や専門知識の制約から高度な対策を導入できず、機会を狙う攻撃にさらされる場合があります。


事業機会と課題

2026年に取り組むべき主な対策

  1. 高度なエンドポイント対策(EDR/XDR):侵害後の横展開を検知し、端末を隔離する能力を整えます。権限拡大や情報流出の阻止を支援しますが、適切な設定と運用担当者が必要です。
  2. 教育によるフィッシング対策:従業員への継続的な啓発と模擬訓練を行います。ポーランド語の詐欺への理解に加え、報告しやすい仕組み、メール保護、MFAなども組み合わせます。研修だけで侵害を防げるわけではありません。
  3. 脅威情報の活用:脅威インテリジェンスやMDR事業者との協力を通じて、自社の業種や地域に関わる新しい攻撃手法を把握します。情報を実際の検知・修正へ結び付けることが重要です。
  4. 事業継続とインシデント対応:冗長化、オフラインまたは改変困難なバックアップ、検証済みの対応計画を整備します。NIS2/KSCの対象組織では、適用される義務と移行期限に合わせて準備し、既存の義務も確認します。
  5. 戦略的な外部委託:社内の専門家が不足する場合、MSSPやSOCサービスを利用して24時間の監視や対応支援を確保できます。監視範囲、応答時間、責任分担、費用を契約で明確にしましょう。
  6. ゼロトラストとネットワーク分離:必要最小限の権限を付与し、継続的にアクセスを検証します。ERPや産業制御などの重要なシステムを、公開ネットワークや不要な接続から分離します。

2026年に注目すべき動向

1. AIを利用した攻撃と防御

AIは攻撃と防御の双方に使われています。説得力のあるフィッシング文面や合成音声による詐欺への悪用が考えられる一方、防御側では大量のデータから異常を見つける分析に利用されます。AIによる判定にも誤検知や見逃しがあり、人による検証を含めた運用が必要です。

2. クラウドとSaaSの安全性

AWS、Azure、Google Cloudなどへの移行に伴い、設定不備や過大なアクセス権がリスクとなります。CSPMやCASBなどのツールに加え、責任共有モデル、ID管理、ログ監視、データ保護を整えることが重要です。

3. OTと重要インフラ

再生可能エネルギーや電動モビリティーの拡大に伴い、運用技術(OT)のネットワークにも注意が必要です。産業システムへの攻撃は物理的な影響を及ぼし得るため、OTとITの接続に関わる安全性は経営課題です。

4. サイバー保険の変化

サイバー保険では、保険料、免責、補償範囲、引受条件が契約によって異なります。MFAやバックアップなどの管理策の確認が求められる場合があります。一律に保険料が上昇していると判断せず、実際の見積りと条件を比較しましょう。保険は対策の代わりではなく、事業の強靱性を支える一要素です。


連携と戦略

効果的な対策には、技術、組織、企業文化の取り組みを統合することが必要です。

1. 包括的なリスク評価

攻撃対象となる領域を整理し、デジタル資産、取引先との接続、クラウドサービスを把握します。重要度の高いシステムと情報を優先して保護しましょう。

2. 多層防御

ファイアウォール、侵入検知、端末保護、ウェブフィルタリング、暗号化、MFAなど、複数の防御層を組み合わせます。一つの製品だけで完全な保護はできません。

3. 継続的なパッチ管理

既知の脆弱性を修正するため、ソフトウェアを適切な優先順位で更新します。古いシステムや未修正のオープンソース部品は侵入経路となり得ます。重要システムでは検証と復旧手順も必要です。

4. 従業員教育と安全を重視する文化

定期的な研修、模擬訓練、経営層への説明を通じて、全員が役割を理解する組織的な意識を育てます。失敗を責めるより、早期報告と学習を促す仕組みが重要です。

5. 取引先と供給網の安全性

調達契約に管理策、事故報告、監査や確認に関する条項を組み込みます。重要な供給企業には、契約前と契約後の評価を行いましょう。

6. 情報共有

業界のISAC(情報共有・分析センター)や、利用できる専門家ネットワークに参加し、CERT Polskaなどの公表情報も活用します。組織間で知見を共有することで、備えを改善できます。

7. インシデント対応と復旧

次の内容を含む具体的な対応手順を整備します。

  • 初動での封じ込めと隔離
  • 社内、顧客、監督機関への連絡計画
  • 捜査機関や規制当局との調整
  • 証拠保全、フォレンジック調査、再発防止

8. 保険と資金面の備え

事業中断、データ復元、恐喝への専門家対応などがどこまで補償されるか、契約を精査してください。身代金関連の費用は、契約や制裁・法令上の制限によって補償されない場合があります。MFA、バックアップ、研修などの前提条件も確認が必要です。


今後の見通し

ポーランドでも、継続する脅威、規制の強化、デジタル依存の高まりが企業の課題です。安全対策をIT部門だけの問題として扱わず、ガバナンス、リスク管理、コンプライアンスへ組み込むことが、顧客、当局、パートナーの信頼につながります。

今後の分野を形作る動きには、次のものがあります。

  • エネルギーなど対象分野におけるNIS2/KSCへの対応と、対象金融機関に対するDORA、指定された重要ICT第三者サービス提供者への監督。DORAがすべてのICT企業に同一の形で直接適用されるわけではありません。
  • 2026年3月10日に採択されたポーランドのサイバーセキュリティ戦略に基づく官民協力と、2029年までを視野に入れた施策
  • EUなどの支援を活用した人材育成と技能不足への対応
  • 攻撃と防御での機械学習の発展に伴うAIガバナンスへの注目

ポーランドで事業を行う国際企業にとって、サイバー対応力は法令対応に加え、信頼、継続性、ブランドを支える事業の基盤です。


Expand2Polandがお手伝いできること

Expand2Polandは、サイバーセキュリティの専門企業との協力を通じて、ポーランドとEUの要件を考慮した安全管理の枠組みの検討と実施を支援します。

パートナーネットワークを通じて、次の支援につなげられます。

  • 戦略支援:事業目標、リスク、規制上の義務を踏まえた安全対策の方針づくり
  • vCISO:経営層への助言、予算管理、取引先リスクの監督を担うセキュリティ責任者機能
  • リスク評価と侵入テスト:ウェブアプリ、AWS/Azureなどのクラウド、社内ネットワークの技術的な確認
  • MDR:契約した範囲での24時間監視、脅威の検知と封じ込め支援
  • 脅威ハンティング:自動検知をすり抜ける兆候を、攻撃者に関する知見も使って調査
  • インシデント対応の継続契約:契約条件に基づく専門家の確保、封じ込め、証拠調査、復旧と報告に向けた支援
  • 経営層と従業員向けの研修・模擬訓練
  • 取引先の評価と供給網リスクの管理

統治、技術、文化を組み合わせ、脅威を検知し、対応し、復旧できる組織づくりを支援します。具体的な課題については、Expand2Polandの初回相談をご予約ください。

免責事項:本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法律、税務、財務または投資に関する助言を構成するものではありません。